◇「浜言葉」に「すべて出し切る」
今年、出版界の一大ブームとなっている小林多喜二の『蟹工船』。その朗読CDが新潮社から出た。朗読しているのは、樺太出身、北海道育ちの声優、若山弦蔵さん75歳。『蟹工船』で出てくる北海道の「浜言葉」を知るベテランだ。
CDは3枚組みでトータル約3時間半もあるが、若山さんのリアルな語りが飽きさせない。
若山さんは、低音の美声が特徴的な声優。映画「007」シリーズのジェームズ・ボンド役などで知られる名優、ショーン・コネリーの吹き替えなどでも知られる。
結果として、ブームのさなかに発売となった朗読CDだが、企画は昨年冬から検討されていた。
最大の難関は声優選びで、『蟹工船』の世界は、北海道や秋田、青森などの出身者が入り交じった、独特の言葉が使われている。これが、浜言葉。普通の声優に普通の北海道方言を指導する人を付けても、どうしても再現できないニュアンスが多い。
そこで、岡田雅之プロデューサーが演出の香西久・元NHKディレクターに相談したところ、若山さんの名前があがった。
若山さんは、出身地もさることながら、父親が多喜二と同じ北海道拓殖銀行の行員。若山さん自身、上京前に札幌の放送劇団で、漁師や農民の役をやったことがあり、当時の労働者の言葉をよく知っていた。依頼を受けて、「自分の今まで蓄えたすべてを出し切ってやろう」と決意したという。実は『蟹工船』はこれまで、何となく避けてきた小説だが、読んでみて「これはおれにしかできない」とも思ったとか。
若山さんは「単なる昔話ではない物語。音の世界でも、最後の行にある『そして、彼らは立ち上った。- もう一度!』をかみしめてほしい」と話している。【鈴木英生】
引用元 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080924-00000006-maiall-soci
